・『アップルパイのレシピ集』 バーン、パイ作りの悩みをぼやく  「作るのは楽しい。楽しいのだが、   問題は作り終わった"後"のことだ。  「カリスなどは喜んで食ってくれるが、   元々あの男は、おそろしく食が細い。  「まさか試作品をエリザ様やゼノン殿に   お渡しするわけにもいくまいよ。  「つまり現状、毎週のようにホールを   私ひとりで食っていることになる。  「このままの生活を続けていけば、   何が起きるかは想像に難くない……。 ・『呪術師に関する本』 バーン、呪術師の扱う炎について語る 一回目  「『呪術師ラビの力の源は、精霊界が一   《火炎域》の支配者アグニとの    深き繋がりにある』――か。  「帝国魔道士は我々が操炎術に長けるため、   単純にアグニと結びつけているようだが……。  「……。  「刻月戦争を経てラビが帝国に与した際、   呪術もまた、たんなる火の元素魔法として   魔道体系に組み込まれてしまった。  「発火、大火球、炎の嵐……。   すべて帝国人が勝手に分類したものだ。  「それまでは我々の扱う火に名などなかった。  「私は――我ら呪術師の扱う火の本質は、   精霊魔法のそれとは異なる気がするのだ。  「アグニの炎は明瞭だ。  「純粋な光と熱から構成され、そこに   別の要素が入り込む余地はない。  「なぜなら精霊魔法は他の四大元素、   そしてそれらを統べる第五元素との   関係性に、大きく依拠するからだ。  「つまり火の元素だけを抜き出して   行使することは不可能なのだ。  「精霊界に通じその《力》を行使する魔道士を   五行術師(サーエルラア)と呼ぶゆえんだ。  「だが我々が扱う炎はより暗く混濁した、   ともすれば、闇魔法にも近い……。 二回目  「現代魔道学では闇に抵抗できる唯一の手段は   星霜界のアドラールの《力》のみだとある。  「しかし呼水や闇喰いといった呪術……。   これらは闇を弾き闇を滅するものだ。  「さらに闇を"浄化"させる光魔法と違い、   呪術は、相手の闇を拒むのではなく   受け入れることで己の力として発現させる。  「それに――虚炎と呼ばれる闇魔法。   あれは明らかに呪術の火に通じている。  「なぜ我らは、生まれながらに   "こんなもの"を扱える――……?  「我々の《力》の源は本当に、   アグニだけにあるのか?  「カリスは……。  「カリスは、闇を知らぬものが   闇を制することは不可能だと言う……。  「ならば呪術師は、いや私の本質とは……。  「……。 三回目 呪術師ラビに関する本が並んでいる……  「帝国人はよく呪術師ラビというが、   ラビは腐樹海に住む数多の呪術師の   一部族にすぎぬのだがな……。 ・『銀の旋風』 バーン、銀の旋風について熱く語る 一回目  「やはり今一番の旬はエレイン・ヴォダンの   ロマンス小説『銀の旋風』だろう。  「王の側近《黎明の騎士団》の隊長サラと、   若きテンプル騎士カタールの恋物語だ。  「美しい銀の髪を持つ主人公・サラは、   フェリシア第一皇女がモデルだという。  「皇女殿下は、ガンジールとの国交回復に   尽力されていることでも有名だ。  「北の修道院の支配者ナーラウェンとも、   浅からぬ絆で結ばれているらしい。  「なるほど、サラとはお姿のみならず、   その志――内面も通ずるところがある。  「だが私は、彼女の相手役カタールも好きだ。  「彼と私は立場も性格もよく似ている。  「まあ、彫刻のような美貌なのに   本人はそれに気がついていないという   設定は少々嫌味ではあるが……。 seジャンプ  「これらはロマンス小説のお約束――ッ!   多くがそれを持たぬから必要なのだ。 二回目  「カタールは素朴で内気な青年で、   つねに"ここではないどこか"に   強いあこがれを抱いている。  「彼は教会の法に身を捧げる神殿騎士。   もちろん恋など一度もしたことがない。  「それゆえ自分がサラに惹かれているのを   知っているが、自信がなく……。  「もちろん私を始め読者には、二人が   想い合っているのはわかっている!  「だからこそ安心してすれ違いを楽しめるのだ。   エレインが書くロマンス小説の醍醐味だろう。  「来月にはダフネ宮で舞台が始まる。  「何とか半券を確保できれば良いのだが、   噂ではもう九割が予約済みだという。  「その前に"舞台を見に行く"などの理由で、   帝国の役人が休みを許可するとは思えない。  「こういうとき魔道士は無力だな……。  「一目でいいから生き生きと戦い恋をする   サラとカタールを見たかったのだが……。 三回目  「しかしカリスは、なんだって   ああもロマンス小説に辛辣なのだ?  「要は、主人公とヒロインが両思いなのは   初めから"バレバレ"なのに、何度も   すれ違うのが子供だましだという。 seジャンプ  「カリスは何もわかっていない!!  「"バレバレ"なのはすべてエレインの計算。   ロマンス小説とはかくあるものなのだ。  「だいたい嫌なら読まねばいい!  「それなのに私以上に読み込んだうえで   あれこれ文句を垂れるのだぞ――ッ!?  「そのうえ、私が舞台を見に行くと言えば、   自分も行くなど言うのだから始末に負えぬ。  「カリスとなんか絶対に行くものか。  「きっと、始まりから終わりまで、   批評家気取りでケチをつけるに違いない。 seジャンプ  「お断りだ!!! 四回目  この棚には趣味の小説がしまわれている……  「『銀の旋風』の舞台を見に行くのは   無理だろうな……はあ……。 ・『空の酒瓶』※イベント自体没 バーンとカリス酒について語る 一回目  「そいつはスターモルトのエールか!?  「お前にもついに、酒の   楽しさが分かる日が訪れたか!  「悪いが惨敗だ。やるべきじゃなかった。 ?フキダシ(カリス)  「だ、だが昨晩ともに飲んだ時は、   楽しそうだったではないか。  「それはお前と飲むからだよ、カリス。   ひとりの酒ほど惨めなものはない。 !フキダシ(カリス)  「何ィ!?  「我はしょっちゅうひとりで飲むが、   惨めになったことなどないぞ!?  「お前はな。  「……いや。   私の方が間違っているのだろう。  「時々――どうしようもなく苦しくなる。   息が出来ぬような、苦しさだ。  「腐樹海で従者をしていたときより、   はるかに自由なはずなのに……。  「そういうときに飲む酒は、   大体、ロクなことにならん。  「愚かな自分から逃れたくて飲むのに、   よけい惨めな気分になるのだから。  「愚か?  「お前が愚かだというのならば、   ここの連中はムルムス以下だぞ?  「ハハハ! まったく口の悪い男だ。  「だがそんな風に言ってくれる奴がいて、   私は――幸せものだよ。  「ありがとう、カリス。  「ふむ……。 二回目  「なあオブシディア。   次からは我を呼べよ。 ?フキダシ(バーン)  「ともに飲めば楽しいというのならば、   毎日だって、飲んでやろう。  「毎時間でもいい! 毎分でもよいぞ!?   ついでにマクスウェルも呼んでやる。  「あれは可愛げのカケラもない男だが、   酒が入れば少しはマシになる。  「昔はなあ、からかいがいのある   男だったんだが何だって……。 !フキダシ(バーン)  「バ、バカを言え! 私の気慰みに   ディケイ卿を巻き込むわけには――ッ。  「気にするな、気にするな。   枯れ木も山のナントカというやつよ。  「枯れ木……。  「よいか、オブシディア。  「個々の苦しみ、魂の痛みとなれば、   他者の物差しで測れるものではない。  「だからお前が苦しいと感ずるならば、   それはまがいもなく苦痛なのだ。  「そう、なのだろうか……。  「そうとも!  「そして我は、お前の気が晴れるなら   何だってしてやるさ。  「……何だってな。  「……。  「次に……、   飲みたくなったときはそうするよ。  「よし!  「なんなら今から飲むか!?   どこかにエールの残りは……。  「お前――……"重要な話"が、   あるのではなかったか? !フキダシ(カリス)  「うん? ああ……そうか。   そうであったな。  「では今日の朝一番だ――ッ!   実に楽しみだ! なあ友よ!?  「……。(バーン呆れ顔)